<総評>
いずれの班の授業構想も、a) いかに学習の主体である子どもたち自身の問題関心を内側から呼び起こし、b) 子どもたち自身の活動を通して、c) 彼らの取上げた教材にたいする興味関心を高め、d) 教材として取上げた社会問題に対する実践的な関わりを深めて行くかに留意した意欲的なもので、高く評価されるものでした。
<単元についての考察>
吉岡班が、「自然と社会の法則」であり、自然と人間の関係によって生じる問題」、「解決を妨げているのは人間と人間の関係にある」「環境との持続的共存と人類の生き残り」と捉え、「環境破壊」問題と捉えていたのは、適切です。このように教材として取上げる社会事象についての今日的知見の基本を広い視野で踏まえておくことが決定的に大事です。
というのは、対象となる社会事象の変化は激しく、学習指導要領などでは追いつかないことが少なくなく、またその取上げ方も次々に新しい事象を加えるという網羅的なもの盛り沢山になってしまいがちで、核心にある大事な問題が何なのかが分からなくなることが少なくないからです。
<単元の目標>についても、「身近なゴミと環境破壊との関係」「自分たちは何ができるか」と学習主体自身の学習対象(教材)に対する次の行動・実践的な関わり方を掲げている点は、大変に意欲的です。
子どもたちの主体的状況によっては、「何ができるか」にまで突き詰めなくても、自分たちの生活との関係に気がつくところまでに停めることも考えられるでしょう。性急に実践的関わりを求めることは、却って問題への主体的な関わりから彼らを遠ざけることもあり得ます。
<単元/小単元/授業案の導入部の相互関係>
前2者の区別は相対的なものです。
「単元についての考察」では、他の単元との関係、その単元の中心内容とその意義についての多角的な考察。多角的考察とをしておくことは、さまざまな授業構想や小単元を考えるうえでひつようなことです。例えば、「水」という単元を、あるときは飲用水を中心に、ある時は下水処理、あるときは農業用水と食料問題、あるときは洪水や治水灌漑問題として小単元化することができるかどうか(どれが適当かは、子どもたちや学級がおかれた時代状況によって異なります)に関わります。
<ゴミ問題の性質>
これは、上下水道、電気、ガス、防災、通信などと共に、①現代社会で生活する総ての人々にとって必要な事柄であり、②しかし、どれひとつとっても個人的努力ではまかなえず、③多かれ少なかれ共同の営みによって維持される必要がある、④その意味で、<社会の構成員にとっての共通の必要>、つまり公共の事業であるという、共通の性格を持つものです。
現行の指導要領では、地域の様子の学習の次に置かれていますが、こうした公共事業の性質の問題に、社会科の学習を始めたばかりの子どもたちが取り組むのは、簡単なことではありません。単に知らなかったものを見た、珍しいことをしたという経験に留まらず。<社会の構成員にとっての共通の必要>があることに気づき、その重要性を自分たちにとっての大事なことと認識するようになることが欠かせない要点です。
浄水場や焼却場の仕組みなどは(技術科、理科の問題としてはともかく)社会科の問題としては主な問題点ではまったくありません。
<小単元の目標>
a) 既有の知識、経験と改めて<次のより広く、より深い認識>に繋げる形で、集団的な見直し(討論や感想の交換等をとおして)、ひるがえて個々人それまで持ていたが、既有の知識、経験(の狭さ、偏りなど)をより広い視野の中で見直す。
b) 未知のものものとの出会い &/or 「どうしたら良いか?」の実践的関心を(教師が)仕掛け、子どもたち自身が探索する。
<小単元の一般的構成>
上記a+bの活動は、学級の人数や学習対象にもよるが、概ね10時間前後で完結(c)するようにする。他に取上げるべき事柄との関係、一つの問題への集団的関心の持続時間の限界から15時間以上は考えない。
多くの場合は、
1) 導入部分:子どもたち自身の内発的な問いを立ち上げることが目的。
多くの場合は、<a)既有の知識、経験の見直し>から初める。しかし、子どもたちの意欲関心が高い場合には<b)未知のものものとの出会い &/or 「どうしたら良いか?」の実践的問いかけ>から直ぐに入ることも考えられる。
いずれにしても、教員は、子どもたちが教材として取上げる社会事象とどのような関係にあるか;イ)何を知って経験しており、どんな感情をもっているか、何に興味をもっているか/いないのか。ロ)重要な点でも気づいていない、知らない点は何か。ハ)しかし、どのような(社会認識と実践の)発展可能性をもっているかについて、予めしておく必要がある。
2) 展開部分:一つか二つのb)に関わる問題について、子どもたち自身の観察、調査、討論、まとめなどの集団的活動をとおして、既有の知識、経験から、対象となる社会事象についてのより広く深い認識&/or実践的意欲に高めめあっていく過程。
3) まとめ部分:自分たちで得たものを第3者に発表できる形でまとめる作業。
<個別コメント:吉岡班>
1) 当日の報告では、単元や小単元についての(中身ある)考察は口頭でなされたが、だい2ステージではメモ程度でもレジュメに示した方が良かった(もったいない)。
2) 授業展開は、導入部分だけに留まっていたのが残念。
<活動項目、子どもたちの活動、教員の活動、教員の活動上の留意点>の3つが必要。
3) 当節の指導要領にある「子どもの学びの姿と評価」は不要:これは個々に多様な子どもたちの活動を、画一的尺度で数値化して「評価」することに繋がりかねず、却って子どもたちの意欲を押しつぶす効果ももつので要注意。
4) 「教師の指導」は、操作誘導ではなく、あくまでも子どもたち自身から内発的な問いが出るように助けることに徹する。教師にとって都合の良い「正解」を上から「教示」することがあってはならない。
5) 多くの参考文献に取り組んだことは、今後、教材研究(主として第1ステージでやった作業)に取り組む上での良い経験になったと思います。
<個別コメント:ミジンコ
1) 「自分の生活をじっくりふり返ることもあまりない現状」に注目したのは慧眼。
2)授業案の展開部分は、少し盛り沢山ではないか。子どもたちが、集団で毎時間にできる作業は一つが限度。大事な事柄でも、子どもたち自身の力で集団的活動をとおしてゴミ処理の過程なりゴミの行方を、観察、調査、討論、まとめなど学ぶことが大事であって、アレコレの事柄を物知りになることが重要なのではない。観察、調査、討論、まとめの活動ができるようになれば、次に自分たち自身が「どうして?」「どうすればよいか?」の問いを持った時には、そこで培った力を発揮して応えて行くことができる。
3) 「学習内容、学習活動、学習場の留意点、教員の活動、教材など」と授業案の項目を分けたのは、項目も適切で、分かりやすく大変に良かった。
4) ネットの利用については不安を感じた。しかし、リアルタイムの話題を取り入れたことは重要。教員も子どもたちも(既に知っている人、未だ知らない人という上下関係ではなく)同じ目線で対象に向かう関係が作られ、一緒に「どうなるだろう?」などの疑問や、驚き等を共有することができる。
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