2010年6月3日木曜日

参考文献の調べ方(その1)


第2ステージでも、授業案を作る上では、まずは書籍を使う必要がある。
社会科で教材として取上げる社会事象は、実に多岐にわたる。

1.図書館を使う

埼玉大図書館だけでなく、さいたま市立図書館(北浦和図書館、浦和駅パルコの上?の中央図書館、桜区図書館)、あるいは自宅近くの公立図書館の双方を使う。後者には最近出版された本や、一般市民向けであるため大学図書館には入りにくい本が多い。学術書よりもこうした本の方が使いやすいことも少なくない。

また、公立図書館では、必ず「子どもコーナー」と「ヤング・アダルトのコーナー」とチェックすること。子どもやYAのコーナーには、分かりやすく、教材化するうえで直接に役立つものがあることが多い。

教材として取上げる社会事象は、多くの場合は複数の分類項目にまたがっている。例えば、「ゴミ」をめぐっては、①社会(学)のところ、②自然科学関係の環境やリサイクルのところ、③関連する法や政治のところ等など。まずは自分たち自身で書架を見て回った上で、次に必ず受付にいる司書の方に、目的を伝えて適当な本やその探し方について助言を受けること。

2.大きな本屋の利用
(1)じゅんく堂などの大きな本屋も利用価値がある。中には図書館の司書より良く出版状況を知っている人も少なくない。

(2)出版社の目録を見るという手がある。人文・社会科学の諸分野のばあい、定評ある教科書・概説書といえばまあ岩波書店・有斐閣・東京大学出版会あたりのもの「あたりのもの」等とあいまいな言い方をしたのは、この3つから出ているものならすべて間違いないということはなく、またこれ以外の出版社からも良い教科書・概説書はたくさん出ているという至極当然のことをにおわせたかったからに他ならない。

出版社は講談社・文藝春秋社・小学館などを除き大体が中小零細企業で、編集者の数も多くない。編集者が執筆者(その多くは大学の教員)を見つけ、書かせて売りに出すというのが本が出版されるに至る大よその流れだ。だから編集者がどの分野・どういう人脈に強いかどうかでその出版社の企画のあらかたは決まる。こうした目録を見て図書館・本屋で実物に当たってみるのは何の手がかりもないときには効率的なやりかた。出版社の目録は頼めば無料で入手できることが多い。

(3)頼りになる本かどうかを見分かるには、目次と索引を見るとよい。目次を見ても何が書いてあるか分からないようでは(推理小説ではないから中味の概要が分からなくては目次とはいえない)まず駄目だ。索引がついている本ならばまずはまともなものと見てよいだろう。また、注記がしっかりしているか、参考文献や引用文献がきちんと示されているかも大事なポイント。奥付きでどのくらい出ているかを見るのも良いが、できたら出だしだけでも立ち読みしたい。問題設定がわかりやすく明確かどうか。分からなければそれはあなたの現在の水準にあっていないか、その本が良くないかのどちらかなので止めればよいのです。

(4)時間に制約があるときには、新書、ブックレット(岩波書店、かもがわ書房など)からまとまりの良いものを探すのが良い。例えば、八太昭道「ごみから地球を考える」2006年は、ジュニア新書だが、なかなか使えるもの。そもそも難しい問題を初心者にも分かりやすく書くということは専門家にむかって書くよりも余程難しいことなのだ。本当はそれは研究を究めた大家こそがやるのにふさわしい仕事だろう。岩波のジュニア新書や筑摩のプリマーブックスには、YA向けでありながら(であるからこそ?)その領域の大家による分かりやすいものが少なくない。

岩波新書・中公新書・講談社現代新書・ちくま新書・平凡社新書など新書は近年花盛りだ。新書は元来中学校卒業レベルの人なら誰でも読める各分野の教養スタンダードをめざしていた。文庫と同じく西欧で出ていた同様のシリーズもの、例えばフランスではPUFから出ているQue sais-je?(クセジュ文庫として白水社から訳が出ている)に似た発想にたっている。これまた目録を出しているところが多い。大きな本屋のレジの辺りで見かけたらもらっておくと良い。

新書を探すには、「風」のサイトが便利:

http://shinshomap.info/

3.Webから探す

(1)概してインターネットで得られる情報は、「ゴミの山」といってよい。特に日本のWikipediaは、匿名で作られていることのマイナス点で一杯です。社会事象の項目のほとんどの記述は、事実と意見の初歩的区別が曖昧なものが多く、事実についての記述もその情報源が明示されていないものが少なくない。それどころか、書き込んだ人の主義主張や、異論に対する誹謗中傷もあふれているから、タレントのスキャンダルについての報告のようなものならともかく、実際にはWikiを見ていても、まともな報告で参考文献(情報源)の一覧にはWikiは載せないのが「常識」というもの。

(2)Webを使う場合は、作成者が分かり、かつページ作成の意図が明記されているものから信頼に足るものを選ぶこと。官庁のサイトが多くの場合、時々の政府の意向によって変わるように、作成者の社会的信用性と内容の信頼度は一致するとは限らない。例えば日中関係について日本外務省のサイトで得られる情報は、日本政府の利害に制約されたものでしかない。

信頼性のあるサイトの例としては、本川裕さんがつくっている「社会実情データ図録」がある:
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/index.html

(3)Webの利点は、図書カードを繰っていたら何日もかかることが瞬時にして検索されることにある。それだけに検索サイトを使い方に慣れることが大事だ。キーワードの入れ方がまずければ、実際には役に立つ文献資料が沢山あるのに、まったくヒットしないこともありうる。
イ)テーマのいくつかについてキーワードを替えたり組み合わせたりして検索すること。
ロ)検索した結果、新たに知ることのできた著者・研究者名、キーワード、良く目につく出版社を新たなキ−ワードとして活用すること。
ハ)検索は瞬時にしてなされるが、役立つ情報源を見つけるには所要時間を相当に予定しておかなければならない。



0 件のコメント:

コメントを投稿